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目次 ・第一話 板絵絵話集 「マーリと のうさぎ」 

  

■「マーリと のうさぎ」 (板絵絵話)



板絵絵話集
作:有賀忍  蒲L朋社

               1

マーリと のうさぎ

 マーリは びょうきの ばあちゃと ふたりきりで
くらしていました。
マーリは くらいうちに おきて そうじと せんたくを
すませ、ごはんを つくります。
「おまえには くろうを かけてすまないねえ。」
ねたきりの ばあちゃが よわよわしく いいました。
「いいえ くろうだなんて。それより、ばあちゃこそ
はやく げんきに なってね。」



              

 マーリは うしに えさを やり、ちちを しぼります。
「ミルクを のめば、ばあちゃ きっと よくなるわ。
うしさん ミルクを ありがとう。」
 マーリは にわとりに えさを やり、たまごを
あつめます。
「たまごを たべれば、ばあちゃ きっと よくなるわ。
にわとりさん たまごを ありがとう。」
 あるひ、にわとりが たまごを たくさん うみました。



              

 マーリは まちへ たまごを うりに でかけました。
「たまごを うった おかねで ばあちゃに くすりを
かって あげましょう。」
 マーリが むらはずれの はたけまで やって くると
こどもたちが のうさぎをつかまえて
いじめて いました。
「かわいそう。やめて!」
マーリは こどもたちに たまごを あげて
のうさぎを にがして やりました。




              

「ありがとう マーリ。」
のうさぎは ちいさな こえで いうと、うれしそうに
とびはねて くさむらに きえて いきました。
 マーリは からに なった かごを みて きゅうに
かなしく なりました。
「あーあ、ばあちゃの くすりが
かえなく なって しまったわ。」
マーリは きた みちを とぼとぼ かえって いきました。




             

 マーリは のはらで たんぽぽを つみました。
「くすりは かえなかったけど、ばあちゃの おへやに
おはなを いっぱい かざって あげましょう。」
マーリは たんぽぽの はなを いくつも たばねました。
はなの かんざしや くびかざりも つくりました。
「おみやげも できたし、
さあ いそいで かえりましょう。」 





             6

 マーリが とうげまで くると、
きゅうに つよいかぜが ふいて きました。
ヒューン!
かごの なかの たんぽぽは そらに まいあがり、
はなの かんざしも くびかざりも ひとつのこらず
ふきとばされて しまいました。
「あー…、せっかく つんだのに……。」
マーリが なみだを こらえて あるいて いると、
うしろで ちいさな こえが しました。
「マーリ げんきを だして!」





             7

ふりむくと のうさぎが たって いました。
「さっきは たすけて くれて ありがとう。
いい もの あげる。 これはね、げんきが でる
にんじんだよ。」
のうさぎは マーリに ちっぽけな にんじんを
わたしました。
「たんぽぽも つんで きたよ。」
のうさぎは マーリに はなたばを さしだしました。
「のうさぎさん ありがとう。」
 マーリは うれしくなって いえまで はしって
かえりました。 






             

 マーリが たんぽぽを かざると ばあちゃは
もう おおよろこび。
「かわいい おはな。 おへやに はるが きたみたい。」
マーリが ばあちゃに にんじんを たべさせると
ふしぎ ふしぎ びょうきは みるみる なおって
しまいました。
「ありがとう マーリ。 おまえの おかげだよ。」
ばあちゃは マーリを しっかり だきしめました。
 マーリは ばあちゃの うでの なかで そっと
つぶやきました。
「のうさぎさん ありがとう。」


                         おわり






おわり